しろとくろとあたいはぐれーを




レコーディング用に
用意してたけんばんを

たたきわりそうな夜中

そらそうよ
音のルールがなんとなくわかっていても
やっぱりやり続けて来た人とは
大きく違う

ギターの音色とは違う


触ればわかるけど
わからない悔しいわ


なんか今日のシャワー湯が熱いわね
そうですねたしかに熱いです

なんて知らん婆さんと銭湯で温めた
体が刻々と冷えてきて

部屋中の物を
全部全部捨ててしまいたいくらい
いつもそう
極端なの

ギターが弾けないのが
ほんとにあれなの(弱音を潰す)


鍵盤を触りながら
小さい時のこと思い出した
まだ身長が100センチもなかったころ

課題曲なんて弾きたくなくて
みんなが弾けるやつがやりたかったの



ねこふんじゃった


教えてって先生に言ったら
そんなのは弾けなくていいから
発表会の練習しましょうって


しかたないから家で弾いたら
そんなの弾けなくていい
って母は叱って


インディアンの踊りが
課題曲だった

キーボードの線はよく断線した


ピアノ教室の
行き道帰り道


自転車に乗った男

知らない男の人

いつからかいつも付いてきて

先生に言ったら

気のせいでしょ

っていわれたこと



その頃から一人で遊ぶ達人のあたいは
泥団子片手にお気に入りの
コンクリートチェアーに座って
ドロップ(缶)をかしゃかしゃ鳴らす


おとこのひとがきた

自転車を停めて


こっちに近づいて来た


いつも付いてくる人だって
すぐわかったの


目の前まできて
のぞきこんできた


純真無垢のあたいは
きっとドロップが欲しいんだわって


「たべる?」


って聞いたら


おとこのひと
首を横に振って

何も言わずに去ってった


その日からもう見てないの


今考えれば
なんだか背筋がぞっとする

アリー少女は
無事に大人になりました



辞めたいとも言わなかった
練習なんかしたくなかった
弾きたいものがなかった


大きなマンションの1F


ヤマハピアノ教室のグランドピアノ
壁の白さと
いかにも、な先生
待合室の花瓶


もうちょっと頑張ってれば良かったな




かつてのアリー少女は思いました



今なら楽しく弾けそうね




明日はやっぱりからだひとつで



もう眠るんだ

朝が来る

あしたは可愛い服を着るんだ



     中野セントラルパーク
出番は14:30から

入場無料
です